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パンク侍、斬られて候

町田康 著(角川文庫)



何年かぶりに再読した。一見荒唐無稽なSFタッチ時代劇なのだが、現代社会を斜に構えて突き刺すような洞察力は、文士を装った剣士のよう。何度読んでも色あせることなく切れ味ばつぐん。とんでもなくかっこいいパンク侍だ。

江戸時代、舞台は架空の黒和藩。ふらりと現れた掛十之進という牢人が、茶屋で盲目の娘を連れた巡礼の老人を切り捨てたところから騒動が勃発。藩は大揺れ。阿鼻叫喚な大惨事へと発展していく。

その過程がとても面白い。強大な権力を持ち財政や秩序をとりしきる藩主や重臣たちの組織図と人間関係が、表向きと予定調和の慣習に縛られている現代の政治、行政、企業の内面を映し出しているようで笑える。

藩から仕事を請け負おうと尽力する主人公の掛十之進。その姿はまるでイベントやまちづくり、地域活性化を企画しているコンサルタントか、民間から出向社員のよう。以前から積もりに積もっていた藩内の確執は、牢人・掛の提案や言動に振り回され藩内二大勢力抗争へと発展していく。

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裏取引、諜報、嫉妬、ねたみ、裏切りなど多様な思惑が渦巻き、失墜、更迭、左遷を企てようとする組織体質は、昨今の政治や地方自治、企業などの失態を見ているようで滑稽。「ちゃんと仕事せんかい!」と大衆の声が響いてきそうな痛快描写だ。

新興宗教「腹振り党」の恐怖を煽り、ビジネスを目論んだ主人公・掛だったが、「腹振り党は実在するのか疑惑」に事態は大揺れ。掛を雇った重臣の責任追及もまぬがれない大ピンチ。

藩の面目と均衡をたもつために掛たちに残された選択はひとつ。すでに解散してしまった「腹振り党」を復活させることだった。

腹振り党率いる暴徒VS猿軍団の闘いでリズミカルな文体がクライマックスに向かって加速していく。

藩の壊滅的崩壊。カオスとトランスを経て訪れる終焉…。

最終ページ、最終行の青空描写は、最後の句点と余白まで実にシュールでかっこいい(感服)。

敬愛する筒井康隆氏がドゥマゴ文学賞を授けた希有な才能が創出した、記念すべき新感覚SF時代劇第一弾だ。


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genre : 小説・文学

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kemurino

Author:kemurino
■けむりのまきたろう(♂)/年式:61式/居住地:軍艦が浮かぶ港町。自主映像チーム「煙野映画」代表。オリジナルショートムービー「暴中ハンター☆優」などをYouTubeで発表中。映画、本、音楽、麦酒が好物。instagramkemurino.films

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