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かわいそうだね?

綿矢りさ著(文春文庫)


可哀相、気の毒、不憫。日々いろんな事柄に対して同情という感情が働く。

他人の身の上になって、感情を共にすることは社会の道理で、人は幼い頃から「困った人がいたら助けてあげましょう」と道徳フレーズをインプットして生きている。

しかし、同情は困っている人と必ずしも対等な関係であるとは限らない。身の回りには同情だけでは解決できない現実も多い。

「かわいそうだね?」は、交際中の彼氏が、元カノと同居してしまうというシニカルな三角関係を描いた作品。

主人公は彼氏の突拍子もない相談にショックを受けながらも、彼を理解する大人の女として振る舞い、元カノの境遇に「かわいそう」と同情してしまう。
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だが主人公はイライラを募らせ、ついに彼氏のメールを開いてしまった。

恋愛を通して、困った人を助けることと、「かわいそう」という同情のベクトルはまったく異なるものであることを示唆する面白い作品だ。

物語の始まりと、エンディングの地震の描写も興味深かい。

同性の僕からみても彼氏の態度や考えは理解しにくいが、そんな男に振り回される女性たちの本音や心理に作者の洞察力が冴え渡っている。

綿矢作品のお楽しみの一つである妄想描写も笑ってしまった。

物語のクライマックス、主人公が封印していた関西弁で元カノにぶちぎれるシーンは圧巻。以前読んだ『勝手にふるえてろ』がさらにパワーアップしたかのように主人公のモヤモヤ感が解き放たれる、爽快なエンディングだ。

社会は同情のシェアでは満たされないものをたくさん抱え込んでいるのかもしれないなぁ。


同時収録『亜美ちゃんは美人』

高校入学と同時に引かれ合うように知り合う主人公と亜美ちゃん。

主人公も美人だが、亜美ちゃんはもっと美人。ちょっと目立つ二人は校内でも一目おかれる存在だ。

この年代の友人関係は、朝井リョウが『桐島、部長辞めるってよ』で描いた学校という小さな世界観の中で、自然とランク付けされていくカースト制度を思わせた。

親友となった二人の友情は大学へ進んでも続いた。が、主人公の心境は、ちょっと複雑になっていく。親友の亜美ちゃんがとにかく男性にモテ過ぎるのだ。

超美人といつも一緒に連んできた主人公の心模様がとてもリアルだ。

ところが、常にモテていた亜美ちゃんが最終的に本気で好きになったお相手は、一般常識では理解できない超ハイパー・チャラ男だった。

驚愕する主人公たちを巻き込みながら、亜美ちゃんは恋に突き進む。

現実世界でも超美人が「えっ?」という男と結ばれることがよくあるが…。

…なるほどね。美人の心理ってこういう感じなんだな。鋭い小説だ。

ラストシーンも実によかった。




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theme : 読書感想文
genre : 小説・文学

キング・オブ・イタメ

台所をあずかる主婦はもちろん、単身赴任のお父様から一人暮らしの学生諸君も自炊の際、必ず一度は作ったことがあると思われる野菜炒め。

にんじん、たまねぎ、キャベツ、もやしなどお好み野菜と豚肉を炒めるだけの簡単定番料理だ。

ところが、家庭の炒めものと中華店や食堂の炒め料理は同じ材料でありながら味がかなり異なる。

特に僕みたいな料理へたれ男がフライパンを振ったりするとコンロ周りに具が飛びちり、野菜の水分がおつゆみたいになり、ウスターソースの風味しかしない妙な野菜炒めが完成したりする。

おそるべし、たかが野菜炒め、されど野菜炒め…なんとも奥が深い料理だ。

きっと業務用の大きな中華鍋や火力、具材の下ごしらえ、野菜を炒める順番などいろんなコツがあるのだろう。


でも、やっぱり自分で作るより外で食べる野菜炒めがだんぜん美味し〜い。と、ときどき食べたくなってしまう外食メニューだ。

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◎肉野菜炒め定食(まつ本)

ひさしぶりに食堂に入り肉野菜炒め定職を注文。野菜のしゃきしゃき感をと風味がじんわり広がる。「そう、そうこの味なんだよねぇ」と一人でにんまり喜び、箸がすすむ。


これぞ、ときどき食べたくなるお店の味。キング・オブ・ヤサイイタメ

奥深い味を楽しませてくれた空っぽのお皿に、ごちそうさまと会釈する。




theme : 食べ歩き
genre : ブログ

祝ブラジル大会「朝いい」

W杯がいよいよ開幕。サムライブルーの勝利に、げんをかつぎ、先日食べたブラジルはアマゾン原産の果実について記す。

見た目はブルーベリーぽい紫色。ヤシ科の植物に実るアサイーだ。

聞くところによると、栄養価バツグンらしく、ポリフェノールや鉄分をかなり多く含んでいるらしい。

ブラジル産デザート「アサイーボウル」の名は、ハワイで人気が爆発して、広がったらしい。

その名の通り「朝」「いい」のだろう、ハワイでは朝の食卓に並ぶことも珍しくないらしい。

日本でも美容健康にすこぶるイ〜!デザートとして、女性を中心に人気を広げている。

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◎アサイーボウル Mand(Ohana Cafe)

別に僕は健康食オタクでもダイエット中でもないが、話の種に一度食べてみたら、ふだんデザート系を摂取しない僕の味覚にもマッチした。

思いの外、美味だったのでまた注文してみた。果実はミキサーの中でスムージー状になるまで砕かれる。

ウィ〜ンウィ〜ンと映画『WOOD JOB!』のチェーンソーにも負けないミキサー音が響き、まもなくするとアサイーボウルが運ばれてきた。

今回はグラノーラとバナナ、イチゴのっかりヴァージョンだ。

ペースト状になったアサイーは、その色目が溶けたチョコレートみたいで、ちょっと異質な存在感を放つ。サムライブルーではなくソウルフード・ディープパープルとでも例えておこう(長すぎか?)。

スプーンでアサイーペーストをバナナやグラノーラにからめお口に運ぶ。

う〜ん、フルーティー!フルーティー! ブルーベリーみたいな甘み、酸味はほとんどない。くせのない味わいが、バナナやイチゴの風味と仲良くハーモニーを奏でるような清涼感が広がっていく。

見るからにヘルシー食であり、炭水化物のような満腹感は得られないものの意外なのは、男の僕でもこれ一杯で腹持ちするのだ。

この日もアサイーボウルだけでランチを済ませたのだが、夜までまったく空腹感に襲われることはなかった。

ブラジル産ディープパープル食って、キックオフ。

おっ!! ブラジル第一戦白星だぁ〜。

サムライブルー戦は日本時間で15日の朝。朝いい!」効果を期待する。


theme : 食べ歩き
genre : ブログ

夫のカノジョ

垣谷美雨著(双葉文庫


テレビドラマ化されていたことも知らず、ついタイトル買いした一冊。

人物の入れ替わり物語といえば映画『転校生』を思い出す。

こちらは、妻と夫の彼女の体が入れ代わるという興味をそそるスリリングな設定。

入れ替わり装置は、謎の薄汚れた老婆。二人の体をチェンジする妙な呪文を唱え、「互いの気持ちが芯まで分かったら元に戻る」と言い残し姿を消す。

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教育熱心で堅実派タイプの39歳主婦は、手狭になった住まいを不自由に思い、新しいマンションの購入計画に家族の幸せを託している。

不倫相手と思われる女は夫の部下として働く20歳の契約社員。すさんだ家庭環境で育ったため、ヤンキー気質。職場でもしまりがないファッションと、粗雑で刺々しい言動で浮いた存在だ。

そんな二人の体がすり替わり、仕方なく本人になりすまさなければならない新生活が始まり、物語がテンポを増して面白くなっていく。

人は変身願望を持ちながらも自分をなかなか変えることができない。

年齢だけでなく、家庭環境、教養、価値観、センス、ライフスタイルまでことごとく異なる二人の女性の悪戦苦闘は、笑いと痛快なユーモアに満ち、時に切なさも醸し出す。

互いに今まで知らなかった世界に触れ、違う自分を演じながらもときどきぼろが出てしまう二人。

しかし、面白いことに周囲は変貌した性格やいままで知らなかった一面を見せる二人に好感を持ち受け入れるようになっていく。

その結果、難題が好転したり、人間関係が円滑になったり変化が生じるようになる。

相手の気持ちを分かるには、まず自分が変わるという人間関係の普遍性をコミカルかつ痛快、かつ明るく描いた作品。互いに自分らしさを見つめなおした二人の女性。その人生観もとても爽やかだ。

著者の作品を調べてみると『竜巻ガール』や『結婚相手は抽選で』『禁煙小説』などタイトルのつけかたがとても面白く、またどれか読んでみたくなる。

theme : 読書感想文
genre : 小説・文学

飲茶でチャン・ツィイー回想

中華を食べたい、という食欲に、がっつり、こってり系の食事をウーロン茶やヘルシー茶と一緒に食べる、という勝手なイメージがついてくる。

なぜだろう?

横浜や長崎のように中華街が身近にない土地で育った僕は、中華料理のカテゴリーや地域性、食スタイルをよく知らず実に曖昧に食してきた。

酢豚、八宝菜、麻婆豆腐、焼き餃子、炒飯、担々麺、春巻き、唐揚げ、ホイコーローなどなど、とにかくたくさん並んだ炒めもの、揚げ物料理を取り分けていただくボリューム感を先行して楽しんできた感じがする。

コース料理も、中華丼も天津丼も、ちゃんぽん、皿うどんもちまきもなんでも中華というひとくくりで捉え、これはどこの郷土料理とか考えていなかった。

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◎飲茶セット(老李)

ところが、「点心」とか「飲茶」という言葉が定着してから、中華料理の印象が少し変わった。


中国人は別に3食すべてがっつり系の食生活を送っている訳ではないことを知った。


小腹が減ったときに小籠包などをつまみながらお茶を楽しむなど、主食、副食以外の間食やティータイム文化もあったのだと。

昼下がり飲茶ランチをいただきながら、僕の中華料理観も少し前進したな、などと考える。

このお店の看板メニューのひとつ水餃子をパクリ。う〜ん、小ぶりでジューシー、あっさりした肉汁の旨みがほわ〜っと口に広がっていく。映画、チャン・ツィイー主演『初恋のきた道』の、きのこと豚肉の水餃子名シーンを思い出すなぁ。



パリパリ&ジューシーな食感が楽しめる春巻きも上品な味わいだ。ここは台湾料理の老舗。台湾おじややハトシなど気になるメニューにも目が止まった。今度飲みながら食べてみよう。

theme : 食べ歩き
genre : ブログ

土の中の子供

中村文則著(新潮文庫)


戦時中、学徒動員により軍事工場で働いた経験を持つ八十歳代のおばあさんと話しをした。


彼女は当時十六歳の女学生。海軍で電気溶接工として働いたそうだ。


戦争末期になるとベニア板製の特攻ボートを作っていたと言う。自分が製作にたずさわったボートで、同じ年代の男子学生が特攻の練習をすることを理解していた、と69年前を振り返った。


そして、おばあさんは、最後に僕にこう言った。

「戦争は絶対だめ。いちばん弱い立場の人がひどい目にあうから…」

僕は、このおばあさんと会った頃、ちょうどこの本を読んでいた。

なぜ人間は自分より弱い者に暴力を振るうのか。なぜ自分より弱い者をしいたげ、なぶるのか。
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幸い今は戦時ではないものの、理不尽で陰湿な暴力といじめは、社会のすき間で日常的に繰り返される。


差別という言葉は道徳的に押さえられているが、映画『それでも夜は明ける』のような蛮行は、毎日どこかで起きている。


親に捨てられ、親戚宅で虐待を受け続けた主人公は、大人に成長しても自己と社会との繋がりを断ち切るような生活を送っている。


時々幼いときの恐怖がフラッシュバックする。それは痛みを少しでも和らげようと覚えた唯一の護身術。歯を食いしばり、全身に力を入れて耐えること。そうすればいつか暴行は終わる。


無抵抗で大人の不条理な暴力を受け入れる子ども。狂気が巣くう小さな心に宿った現実は、加害者の「つまらなそうな顔」だ。


幼い子どもをつまらなそうに殴り、つまらなそうに蹴り、時には掃除機のパイプやアイロンを使ってつまらなそうに、めんどくさそうに殴りつける。


何度暴力を受けても、その意味はまったく理解できない。きっと、これが世界なのだと、主人公は暴力の向こう側に潜む世界の真相を懐疑する。


食事も摂取できないほど衰弱しきった少年は、やがて土の中に埋められ、この世から抹殺されることになる。


身動きできず、押しつける土の重みと闇の中に薄れていく空気と意識。少年はやっとゆっくり眠ることができると安堵する、が。


納得できない何かが、主人公の性を覚醒させ、現実に引き戻す。


弱者が負う傷の深さと再生の苦難を、読者の心に同調させる文章に驚愕。


作者の原点である『蜘蛛の声』も収録されている。


土の中で生まれた子供は、作家となって『銃』や『掏摸』を発表し、人間とは何者か、その謎を問い続けているように思った。


人は「つまらなそう」な暴力にどのように抗していけばいいのだろうか。


おばあさんの「弱い者が一番ひどい目に合う」という言葉が、僕の身体の中でまださまよっている。



theme : 読書感想文
genre : 小説・文学

プロフィール

kemurino

Author:kemurino
■けむりのまきたろう(♂)/年式:61式/居住地:軍艦が浮かぶ港町。自主映像チーム「煙野映画」代表。オリジナルショートムービー「暴中ハンター☆優」などをYouTubeで発表中。映画、本、音楽、麦酒が好物。instagramkemurino.films

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